🌾 農業知識0から米農家へ|地域の方々との出会いと学び

〜新米農家が感じた、地方の人の温かさ〜

田んぼでの作業にも、少しずつ慣れてきました。
朝早く倉庫を開け、トラクターのエンジンをかけると、草のにおいと湿った風が入り混じります。
ひとりで田んぼへ向かうその時間が、少しずつ日常になってきました。

農業は孤独な仕事だと思っていました。
けれど、地域の方々との出会いを通して、その考えはあっという間に変わっていきました。


◆ 草刈り中にもらった“ぶどう”の優しさ

ある日、草刈りをしていると、一台の軽トラがゆっくりと止まりました。
降りてきたおばさんが、「頑張ってるねぇ。うちのぶどう、食べなさい」と笑いながら手渡してくれたのです。
袋の中には、冷えた紫色のぶどうがぎっしり。
「冷やしてあるからおいしいよ」と言い残して、軽トラはすぐに走り去っていきました。

お礼を言う間もありませんでしたが、その一言と笑顔が胸に残りました。
汗を拭きながら、ぶどうをひと粒口に入れると、冷たくて甘くて、ほんのりと土の香りがしました。
その瞬間、農作業の疲れがふっと軽くなったように感じました。

見ず知らずの自分に、当たり前のように差し出される優しさ。
この土地の人たちのあたたかさを初めて肌で感じた出来事でした。


◆ トラクター中にかけられた“すき方のコツ”

別の日、トラクターを動かしていると、道の向こうから手を振る男性がいました。
エンジンを止めると、「すき方のコツを教えとくよ」と声をかけてくれました。

「うねを立てすぎると次が大変だぞ」
「草が短いうちにすくとええ」

ほんの数分の会話でしたが、その言葉がとても印象に残りました。
実際にその通りにやってみると、作業が驚くほどスムーズになりました。

動画や本ではわからない、“この土地の感覚”のようなものがあるのだと思います。
それは長年の経験というよりも、日々の暮らしの中に自然と染み込んだ知恵。
地域に根ざして生きる人の言葉には、深い説得力があります。


◆ 通りがかりの声が、何よりの励ましに

トラクターの音が止まると、どこからともなく声がかかります。
「暑いねぇ、これ飲みな」とペットボトルを差し出してくれる人。
「若い人が頑張ってると嬉しいね」と笑いながら通り過ぎる人。
「雨が来そうだよ、今日は早めに上がりな」と気にかけてくれる人。

どの言葉も短いけれど、心に残ります。
お礼を言うと、決まって返ってくるのは「お互いさま」という言葉。
その一言に、この地域で息づく“助け合いの心”が詰まっているように思います。

農業は一人でやる仕事だと思っていましたが、実際はそうではありません。
田んぼに立っているとき、見えないところで誰かが支えてくれている。
それに気づいてから、作業の景色が少し変わって見えるようになりました。


◆ 農業の魅力は、人とのつながりの中にある

最初のころは、地域の方との距離の取り方がわかりませんでした。
「迷惑じゃないかな」「何も知らない自分が聞いていいのかな」と思うこともありました。

でも、そう思っていたのは自分だけで、
地域の方々はいつも自然に、そしてあたたかく接してくれました。

今では、作業の途中で声をかけてもらうと、手を止めて話をするようになりました。
何気ない会話の中にも、学びがあります。
「この辺は風が強いから苗が倒れやすいよ」
「この時期は夕方の方が作業しやすいよ」
そんな一言が、次の作業のヒントになります。

農業の魅力は、稲や土だけでなく、人とのつながりの中にあるのだと感じます。
この土地で暮らす人たちは、自然と共に生きています。
だからこそ、日々の暮らしの中に“思いやり”や“支え合い”が当たり前に存在するのだと思います。


◆ 新米農家として感じた「地域に生きる」ということ

まだ農業を始めたばかりで、わからないことばかりです。
けれど、ぶどうをくれたおばさんや、すき方を教えてくれた男性、
そして「お互いさま」と笑ってくれた人たちの存在が、
自分の中で確かな支えになっています。

この土地で農業を続けていくには、技術だけでなく、
人とのつながりを大切にすることが何より大事だと感じています。

農業は自然と向き合う仕事であり、人と向き合う仕事でもあります。
地域に根を張るというのは、稲の根を張ることだけではなく、
人の中に自分の居場所を作ることでもあるのかもしれません。

少しずつですが、「この土地で生きていく覚悟」が自分の中に芽生えてきました。
地域の方々の優しさに支えられながら、
新米農家としての一歩を、確かに踏み出しています。


まとめ:助け合いの心が、農業を支えている

地域の方々との出会いを通して感じたのは、
**「農業は人の優しさで成り立っている」**ということです。

作業を教えてくれる人、励ましてくれる人、気にかけてくれる人。
その一人ひとりの言葉が、次の日のやる気につながっていきます。

農業に限らず、地方で生きるということは、
人と人とのつながりの中で支え合うということなのだと思います。

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