今から農業は遅い？

◆ はじめに

「今さら農業？」
そう言われたのは、僕が本気で米づくりを始めようと決めたときでした。

「農業なんて赤字だぞ」「きつい仕事だ」「若い人がやるものじゃない」――そんな言葉を、思っていた以上にたくさん聞きました。中には心配してくれての言葉もあったと思いますが、正直、最初のころはその一つひとつが胸に刺さりました。

結論、農業はやり方次第で安定性のあるビジネスです。

確かに、農業は楽ではありません。天候にも左右されますし、機械の維持費や資材の値上がりも無視できません。
でも、やればやるほど思うのです。
「本当に農業を“やったことがある人”は、そんな言葉は言わないな」と。

反対や否定をしてくる人たちの多くは、実際には農業を経験したことがありません。
数字やニュースだけを見て、「農業＝儲からない」と決めつけてしまうのです。

けれども、現場で農家さんたちと関わっていると、まったく違う姿が見えてきます。
確かに楽ではないけれど、やり方次第でしっかり利益を出している農家さんはたくさんいます。
例えば、直販でリピーターを増やしていたり、ブランド米として差別化していたり。
そうした人たちは皆、口をそろえてこう言います。

「農業は難しいけど、ちゃんと考えれば安定するよ」と。

僕自身、最初は知識ゼロからのスタートでした。
でも、地域の方々に教わりながら、実際にトラクターに乗って、土の感触を確かめて、数字を計算して――。少しずつ“現場のリアル”が見えてきました。
そのリアルを知れば知るほど、「今から始めるのは遅くない」と確信するようになりました。

今、日本の農業は高齢化が進み、担い手不足が深刻です。
その一方で、地域のベテラン農家さんたちは、若い人が始めると本当に喜んでくれます。

僕の地域でも、「田んぼを任せられる人がいない」「機械がもったいない」という声をよく聞きます。実際、僕が倉庫を借りているおじさんも、「トラクターを使っていい」と言ってくださり、それが大きな助けになりました。

新しく始める人にとっては、“今だからこそ”できることが増えていると感じます。
補助金や支援制度も整ってきていますし、SNSやネット販売を使えば、地域に限らず全国に向けてお米を届けることも可能です。
つまり、昔よりも“個人農家が勝負しやすい時代”になっているのです。

農業は「体力勝負」だけではありません。
きちんとノウハウを理解し、大事なポイントを押さえれば、安定したビジネスになると僕は思っています。

例えば、

こうしたことを学び、仕組みを整えていけば、リスクを減らしながら継続できます。
農業も「経営」であり、努力が数字に反映される世界です。

僕はこれまでの記事で、1反あたりの収支や直販の工夫、ブランドづくりの考え方などを書いてきましたが、どれも“安定して続けるための基礎”だと感じています。
経験や勘に頼るだけでなく、情報と計画を活かすことで、農業はもっと面白く、もっと現実的な仕事になります。

「今さら農業なんて遅いよ」――そう言う人がいても、気にしなくていいと思います。
始めた瞬間から、その人より一歩先にいます。

農業は、続ければ続けるほど奥が深く、季節ごとに成長を感じられる仕事です。
失敗もあるけれど、確実に自分の手で形にしていく実感があります。

だから僕は、**“遅い”のではなく、“今がスタートライン”**だと思っています。
むしろこれから先の時代にこそ、知識を学び、仕組みを作り、工夫していく人が求められているのではないでしょうか。